北海道は夏でも涼しいというイメージがあったが、着いてみると横浜とほとんど変わらず、いや、逆に横浜よりも暑く感じた。

着いて早々山根京子と二人で空港からタクシーに乗り、まずは不動産屋へ向かった。

予算もあまりないのはわかっていたので経費は極力抑えたいということもあって最終便で羽田へ戻る予定だった。いわゆるとんぼ返りってやつだ。

飛行機の中で、山根京子からさらに詳しく話を聞いて、兄の山根武の生い立ちや性格、趣味嗜好もだいぶ把握でき、自分の頭の中である程度具体的な人物像が出来上がりつつあった。

タクシーに乗ってから30分ほどしか走ってないが、だいぶ片田舎のような風景になってきた時、「 木島不動産 」の看板が見えた。

「この辺りで結構です。」

私は、料金を払いタクシーから降りた。

なんと澄んだおいしい空気なんだろう…私は思わず深呼吸をした。

ふと横を見ると、どうやら山根京子も木島不動産に来たのは初めてだったようで、じっと店構えを見つめながら何か物思いにふけている様子だった。

(さ、ここからが勝負の始まりだ。)と心を引き締めて、ドアを開け中に入った。

「失礼します。」

入ってすぐ正面に受付のカウンターがあり、その右側と左側にそれぞれパーテーションと観葉植物で仕切られた応接セットがあった。

「いらっしゃいませ。」

受付の女性が席を立ち丁寧なお辞儀しながら私たちを迎えてくれた。声質からして恐らく昨日電話した時に出た女性に間違いない。

「昨日お電話した浜崎ですが、社長さんはいらっしゃいますか?」

と間髪入れず切り出すと、受付の女性は、

「えっ、あっ、、、」と言いながら後ろを振り返った。

振り返った先には、50代前半くらいのスーツを着たいかにも社長オーラむき出しの男がこちらを見ていた。

男はフーっとため息をつき、席を立ちあがり、

「どうぞこちらに」

と、右側の応接セットに手を差し出した。

私と山根京子は応接セットのソファーに座り、受付の女性は素早くお茶を入れ、目の前のテーブルに置いた。

しばらくすると奥から先ほどの男が入ってきた。

「初めまして、社長の和田です。」

「初めまして、私横浜で探偵をしております浜崎です。こちらの女性が、ここで働いていた山根武さんの妹の京子さんです。」

とお互い名刺を差し出した。

「どうぞお座りください。」

と言われた私と山根京子はゆっくりと腰を下ろした。

「早速ですが、先週の土曜日から山根武さんの行方が分からなくなり、連絡も全くとれないため、こちらの京子さんの方から私に捜索の依頼をされまして、今日直接お伺いしました。」

「わざわざ横浜から、それはどうも。。。」

と和田社長は幾分テンション低めの声で話を続けた。

「で、私になにか?」

「いなくなった理由に関して何かご存じないかと。」

と切り出すと、

「ここを辞めてから山根君とは連絡を取ったことがないので、私にはわかりませんが。」

そこで私は山根京子から預かった例の招待チケットを差し出した。差し出した瞬間、一瞬和田社長の顔つきが変わったのを私は見逃さなかった。

私はそのまま話を続けた。

「山根さんは、いなくなった翌日、どうやらこちらに行くつもりだったようなのですが、アパートに置いたまま前日にいなくなってしまったので、何か関係あるかと思いまして。」

「さあ、私には。。。」

と和田社長は首を傾げたが、どう見ても何か動揺している様子は隠しきれていなかった。構わず私はそのまま続けた。

「この招待チケットのアンテナショップは、元々こちらで企画され、山根さんが担当されていらっしゃったようですね?」

「ええ。」

冷房がかなり効いていて、まったく暑くないのに、和田社長はポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭きだした。

(何か知ってるな。)私の予感は確信に変わった。

「その時のお話を詳しく教えていただけませんか?」

確信を突かれたと悟った和田社長は、

「ちょっとお待ちください。」

と言って、一旦自席に戻り、一冊のファイルを持ってきた。

背表紙には、『神奈川県横浜市みなとみらい地区アンテナショップ出店』の文字がはっきり見えた。

和田社長はファイルを開き、あるページを我々の前に向け差し出した。

そのぺージは、アンテナショップの出店候補地の写真の一覧のページだった。5か所ほどあったようだが、その候補地の前で和田社長と山根武ともう一人の男の3人が必ず写っていた。

和田社長はそのページの写真を我々に見せながら、

「最終的に実際に出店が決まった場所がここなんですが、、、」

と1枚の写真を指差した。私はここに写っている男のことが気になり、和田社長に聞いた。

「現地へはこの3人で行かれたんですね?」

「いえ、候補地廻りは4人で行きました。」

(ん?)疑問に思った私はさらに聞いてみた。

「常にこの3人で写っていらっしゃるようなんですが?」

「ええ、この写真を撮っているのが、道日新聞社の記者で、山根君の大学時代の友人の白井という方で、アンテナショップの出店の特集を組んで記事にするため、候補地廻りにも同行され、その4人で廻っていました。」

(これはラッキー、白井という男のことももしかしたらなにか聞けそうだ。)

私は間髪入れずに、

「では、ここに写っている男性の方は?」

和田社長が再び額の汗をハンカチで拭った。

すると突然隣で沈黙していた山根京子が口を開いた。

「私、この男性知ってます。」

私は驚きを隠せず、山根京子の目を見て、思わず大きな声で、

「え?」

私は、今回の登場人物が何らかの関係で全員がつながっていることに驚きを隠せなかった。

第四章 完 第五章へ続く

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